ここは、都内にある小さな賭博場。
その小ささゆえに利用客も相応に少ない、だが、ここでは他の賭博場とは一味違うシステムがある。
それは、借金の帳消しを掛けての勝負。
これは、どれだけの借金を負っていようと、ここのディーラーとの勝負に勝てば、全てがチャラになるという人生のどん底を歩いてきた人間にとって、ここは、まさに天国のような場所。
しかし、そんな巧い話だけではない。負けたらそれ相応の罰を負う事になる。その罰を受けて帰ってきた物はいない。だから、此処にあるのは地獄の門でもある。
天国と地獄、生と死。それらを明暗に分けてしまうり場所。それが、ここの賭博場である。
今宵も、その利用客が現れる。最後の手段として、神の慈悲を授かるために。それが地獄の道になるともしらずに……。
今夜も、一人の少女を舞台に、長い長い、夜の時間が始まる
少女、林ルカは言っては何だが、不幸な少女である。
小学生5年生という、まだ子どもといっても差し支えない優しい性格の彼女だが、親が作った多額の借金、一億円の返済の為、アルバイトに出る事を親から強要されていた。
しかし、彼女が稼いだ金は、全て親のギャンブル代につぎ込まれ、一日で消えていくなんて日常茶飯事であった。
そんな親も、遂に借金で首が回らなくなって夜逃げをした。
一人娘のルカを売り払って
その結果、組織から組織へと彼女は色々な場所を盥回しにされ、最後に行き着いた場所がこの賭博場である。
「ようこそ、あなたの人生を変える賭博場! エンゼルへ。私は、あなたの為だけに用意された特別バニーガール兼ディーラーのリコ。略してトクバイのリコです。よろしく」
賭博場の扉を開けた途端、目の前に現れた美人のバニーガールから、彼女は歓迎を受けた
「よ、よろしくお願いします」
「かたっくるしい話は無しにしましょ。林ルカさんの事は、もうすでに知っているわ。あなた、本当に大変な人生を送っていたのね~。でもそれにめげずに頑張ってて、偉いわ」
中に入り、リコに案内され、彼女が進む道を後ろから付いていく最中、不意に彼女から話しかけられた
「あ、ありがとうございます」
元々人見知りの気がある娘である。咄嗟に褒められて、ついどもってしまった。悪い癖だと、彼女は少し自分の性格に落ち込んだ。
「そんなあなたに、今まで見返りもなく苦労してきたあなたの為に、今回だけ特別に、ここのオーナーがチャンスを与えてくれました」
「ゲームに勝てば借金帳消し、おまけに運がよければ大金ゲット! 一文無しから大金持ちへと一気に転向するチャンス」
「で、でも、もし負けたら……」
確かに彼女にとって理想的だ、勝てば最低でも一億ある借金が0になるのだから。だから、それ故油断できない。美味しい話には、裏があるのが常なのだから
「あら、それは大丈夫よ、あなたが勝ちやすいシステムになってるし、もし負けてもこれ以上借金が増える事はないから安心しなさい。第一、一億の借金持ってる人にさらにお金を追及しても払える金なんてたかがしれてるだろうしね」
それを聞いて、ルカは安心した。これ以上は底に落ちないと、安心してしまったのだ。
「さ、着いたわよ、ここが、私とあなたが勝負する場所よ」
言って、案内されたのは、赤の絨毯が敷き詰められた部屋。
上を見上げると、部屋の中心に豪華なシャンデリアがぶら下がっており、その丁度真下にテーブルがあった。
そのテーブルを真ん中に挟むように、二脚の豪華な椅子が設置してある。
「さ、そこの椅子に座って」
リコに促され、おずおずと彼女に指定された椅子に座る。ルカにとっては、こんな豪華なイスに座るのも初めてであった。思わず身が強張る
「この部屋にいるのは私とあなただけよ、そんなに緊張しないで、リラックスしたらいいわ」
「は、はい」
そう言われても、そう簡単にリラックスできる物じゃない。が、悪い心地はしなかった。
その反応に、彼女はニコッと笑うと、
「それじゃ、早速だけど、私達がやるゲームのルールを説明するわね」
おもむろに、リコは懐からある物を取り出した
「ルカちゃん、これ、何かわかる?」
「と、トランプです……」
ルカがおそるおそるリコがしてきた質問に答える。
「そ、トランプ。ルカちゃんもこれで遊んだ事あるわよね?」
「は、はい。学校の友達と、休み時間に……」
「なら話が早いわ。私達がこれから行うゲームはこのトランプを使ってやるの」
そう言うと、彼女はトランプを広げ、赤と黒の二種類に分け始めた
「ゲームは、赤と黒に分けた26枚ずつのカードを使うの。まず、初めに、この26枚のカードを入念にシャッフルする。シャッフルしたら。そのカードをこのテーブルの中心に置く、これでゲームの準備は完了。簡単でしょ」
「はい。簡単、ですね」
続けるわよ、ルカに確認を問い、説明を続ける
「最初に、このテーブルに置いた自分のカードから5枚、上から取るの。そうしたら、じゃんけんで先攻後攻を決める。決めたら、先行の人は5枚のカードの中から1枚選び、裏向きにして提出、提出したのを確認した後、後攻の人も同じく、5枚の中から一枚選び提出。2枚出揃ったらカードを表向きにする。この時、数字が勝っていた方に2ポイントゲット。カード強さの順は、2が最弱で、そこから3、4と強くなっていって、Aが一番強いの。そして使ったカードはまとめておいて、自分の横に置く事。そうしたら、最初にシャッフルしておいたカードの中から1枚引いて、手持ちのカードを5枚に戻す。その後、先攻と後攻を交代。これを場、手持ち、全てのカードが無くなるまで繰り返す。最終的にポイントの多い人の勝ち……ちょっと難しかったかしら」
「……いえ、大丈夫です。理解しました。続けてください」
「そう、じゃ、続けるわよ、先攻の人が場にカードを出して、後攻の人がカードを出した時、自分の部が悪いなあと感じた時は先手の人は降りる事が出来るの。その場合、相手に1ポイント与えちゃうけど、負けて2ポイント取られるよりかはマシね。勿論、その場合もカードは表向きにオープンするわ。ここまでは大丈夫?」
「はい、ルールは大体分かりました」
「じゃ、次からはこの勝負だけの特別ルール、さっき私は、先手の方は降りれるって話をしたけど、いつでも先手で降りられるのはルカちゃんだけで、私は、ゲーム全体を通して3回しか降りられないの。まあ、ハンデの一つよね。その代わり、私はジョーカーを1枚、私のカードの中に入れてるわ。このジョーカーは他のどのカードよりも強いの、Aよりもね。その代わり、別のカードを1枚抜いてるけど」
「そしてこれがもっとも注意しなければいけない事、ディーラーはいくら2ポイントをとられても何のペナルティーもないけど、ルカちゃんが3回2ポイントを私に取られたら、ペナルティーを受けてもらうわ。その後1回ごとにペナルティーが強くなっていくから注意してね。ただ、そのペナルティーも受けてる時からディーラーから2ポイント取った場合、軽減されるけどね」
「あの、ペナルティーって……」
「軽いものよ、別に気にしなくても大丈夫。それじゃ、説明も聞いた訳だし、始めましょうか」
「あなたの運命を決めるトランプゲームを」
「トランプは私が黒、ルカちゃんが赤で良いわね?」
「はい、結構です」
「じゃあ、シャッフルして、場の中央に置いて。……………………置いたわね。そこから5枚引いて、ジャンケンしましょ」
ジャンケンの結果、リコが勝ち、リコが先攻となった。
一回戦
「私からね。…………………………」
五秒程、彼女は手札を見ながら考えた後、一枚のカードを提出した。
「次は、あなたの番よ」
ルカは、言われて自分の手札を見て考える。自分の手札は、『3、5、6、8、10』の5枚。決して悪くはない手だ。
「……(3と5、そして6も多分キツイ。となると8、10のどちらか……)」
ルカとしては、様子見も兼ねて8のカードを出したかった。それなら、7以下のカードにも勝てるし、自分も強いカードを残せる。
しかし、それを出すには、ある懸念があった。それは、勝負の直前にリコが言ったある一言。
『3回負けるとペナルティー』
この言葉が、重く、重く、彼女に圧し掛かってくる。
「(やっぱり、8のカードも……)」
萎縮する。多分大丈夫だと心の中では思う。だが、多分ではダメなのだ。絶対的な安心が、8では足りないのだ。もっと、大きな数字でないと。
「……、…………」
ルカも、ようやく一枚のカードを選び、場に提出する。
「……、降りはしないわ。勝負よ」
その時、あっ、と彼女は何か思い出したかのような声を出す
「そうそう、ルカちゃん、カードをオープンする時なんだけど……」
「? はい、何でしょう……」
「カードのすり替えを防止するために、他の4枚を裏向きにしてテーブルに置くの、オープンしたら、また自分が持っていいわ」
「……分かりました」
この言葉を聞いて、二人は残りの4枚を裏側に向けて、テーブルの邪魔にならない所に置く。
「それじゃ、改めて勝負よ」
「…………はい」
そして、彼女達は、自分の出したカードを掴み、ゆっくりと表に向ける。結果は、
リコ、6
ルカ、10
「…………っ!!」
「あら、私の負けね」
「(そんな、じゃあ、8でもっ……!)」
「一枚カードを使ったから、使用したカードは隅に置いて、山札から一枚引きましょ」
「そう、です、ね……」
消沈しながら、ルカはカードを引く。
引いたカードは、『7』
ポイント
リコ 0
ルカ 2
2回戦
「次は、ルカちゃんの番からよ」
「………………、はい……」
結局、ルカはプレッシャーに負けて、『10』のカードを出してしまった。
その結果がこれだ。勝つには勝ったが、強いカードを一枚消費してしまった。
「(あの時、怖がらずに『8』を出してれば、勝っていたし、『10』も残せたのに……)」
しかし、今更やり直せるわけがない。ルカは気持ちを切り替え、自分の手札に目を通す。カードは「3、5、6、7、8」
「(ここは、3を出して、降りよう)」
相手に1ポイント与えてしまうが、下手なカードを出して負けるのだけは阻止しないと。
それに、あわよくば、相手の強いカードを戦わずに消費させられるかもしれない。それが、ルカの考え出した答えだった。
「(……よし!)」
ルカ、3のカードを提出
「……私の番ね」
ルカがカードを出したのを見た後、リコがそう呟く。
「…………」
リコは、1回戦の時と同じように長考せずにカードを1枚提出。場にカードが出揃う。
「はい、出したわよ。どうするの? 勝負? それとも、降り?」
「…………降ります」
「そ、じゃ、私が1ポイントね。でも、ルールに従い、一応カードをオープンするわよ」
「……はい」
二人は、さっきの例にならって、残り4枚を裏向きにして、テーブルに置き、伏せていたカードを表に返す。
リコ 2
ルカ 3
「(そ、そんな……)」
「私に1ポイント入ったけど、惜しかったわね~」
ポイント
リコ 1
ルカ 2
3回戦
「また私からね……」
言うと、今度はほんのちょっとの思考すらせずに、カードを提出。ルカに回す。
「はい、あなたの番よ」
その顔に焦りも何もない。極めて冷静な声で、彼女を促した。
「……は、い」
ルカはその逆だった。表情こそ何も焦りは浮かべないように努めているが、それもいつまで続くか分からない。
「(私が降りるのを読んだんだ……でも、だけどっ!)」
内心は、疑心で一杯だった。冷静という言葉は、どこかへ飛んで行ってしまったように。
「(なんで!? なんであそこで2が出せるの!?)」
わからない、この茹だった頭ではいくら考えても、それに対する結論が出せない。
ルカは、頭の悪い少女ではない。むしろ、頭が良い分類に入る人間だ。
しかし、それは小学生と言う枠組みでの話。一般人と比較すると、まだ全然ダメなのである。加えて彼女はまだ子どもである。
故に、彼女は気づかない。大人の編み出す策略に、気づけない。
「(集中! 今は勝負に集中しないとっ!!)」
だから、彼女は逃避する、結論を出すという事を。目の前の勝負に集中するという建前の下に。
彼女は気づかない、その考えが、天国から遠ざかり、地獄へと続く階段を一段、また一段と歩を進ませてる事を。
「(私がさっき引いたカードは『12』、これならほとんどのカードに勝てる!)」
彼女の手持ちは「5、6、7、8、12」の5枚、
「(ここは、12を温存して、8を出そう、リコさんの今までのカードの流れからしたら、これで大丈夫なはず)」
ルカ、『8』のカードを提出、これで、場に2枚のカードが揃う
「リコさん、勝負ですか? それとも、降りるんですか?」
いつになく、強気な言動を取っているのは、恐怖から来る焦りなのかもしれない。
「う~ん、そうねえ。…………。勝負よ」
そして、二人は同時にカードを捲る。
リコ 4
ルカ 8
「(か、勝った……)」
読み勝った、その事実が、彼女を安堵に押しやった。
「あら、また私の負けね」
ポイント
リコ 1
ルカ 4
4回戦
「(私の先攻……ここは、勝負に出る!)」
今回引いたカードは『9』、これで手持ちは「5,6,7,9,12」になった。
「(前回リコさんは、私が降りるのを読んで『2』を出した、なら、今回は『7』を出して、読みに来たリコさんの数字をさらに上回る!)」
「(私は、ペナルティーが怖くて、自分の先攻は勝負に出ない。と、リコさんは思ってる筈。なら、それを逆手に取って、あえて勝負する)」
彼女が自分の番でも勝負を仕掛けようとするのには、理由があった。
それは、お互いに消費したカードの強さ。
ルカは『10、3、8」の三枚
対するリコは『6、2、4』の三枚
どれも、ルカの出したカードより弱い、その分、彼女は手札に強いカードを抱えてる危険性があった。
また、このままでは、いずれじり貧になるのではないかという危惧もあった。
当然だ。彼女はペナルティーが怖くて後攻で数字の低いカードが出せない。つまり、結果的に、数字の高いカードを安全性から選んでしまう。そうなる事を彼女は自覚していた。
なので、今のうちに点差を広げさせなければならなかった。まだ自分にも強いカードがたくさんある内に。選択肢がある内に。
だから、彼女は勝負に出る。降り手を潰す事が可能な『4,5,6』のカードに勝つことができる『7』のカードを持って。
ルカ、勝負の『7』のカードを提出。リコに順番を回す。
「…………………………、………………」
リコ、しばしの思考。だが、10秒前後経過後、提出。
「ハイ、出したわよ。で、どうするの?」
「しょ、勝負です」
リコの問いかけに、少しだけ強気で返す。
「分かったわ、じゃ、開けるわよ」
二人の手がカードに伸びていき、カードが表がえる。
リコ 9
ルカ 7
「あら、私の勝ちね」
「な、あ……(そんな、降り読みの筈じゃ……)」
有り得ない、そんな思考がルカの全身を駆け巡った。
だが、それを否定するように、教え正すように、リコがルカに言葉を紡ぐ。
「だって、ルカちゃんさっきと違って、目がギラギラしてたんだもん。そんな視線を見たらお姉さん燃えちゃって、つい強いカードを出しちゃった」
「あ、あ……」
そして、道が開かれる、地獄までの一直線の道が。
堕ちてゆく、奈落の底へと。彼女が知らない内に、どんどんと。
「ペナルティーまで、あと2回よ」
ポイント
リコ 3
ルカ 4
5回戦
「私からね、……はい、出したわよ」
リコは、たいして間を置かずにカードを置く。その顔に焦りは無い
対して、ルカはと言うと、
「(まずいまずいまずいまずい!! 何とかしないと、何とかしないと!!)」
もはや、隠す必要もなく、顔に焦りの表情が見えていた
負けられない。ペナルティーも受けたくない。でも勝てない。相手の方が数段上手だ。
さっきの読み負けで、ようやくその事実に気づいたルカ、しかし、もう彼女は引き返せない。引き返せる環境にいない。
さっき引いたカードは最悪の『2』、これでは戦えない。
「(12だ、12しかない! それで勝てなかったら、もう……)」
彼女の手持ちは「2、5、6、9、12」
ルカ、12を提出、しかし、運命は彼女に残酷だった。
「う~ん、部が悪いわね、『降りる』わ」
「え……(そんな……、そんな……!! 折角の、『12』が……)」
リコは、無情にも、勝負を降りる選択をした
「ルカちゃんに1ポイントあげちゃうけど、まあいいとしましょ。それじゃ、カードを開けるわよ」
リコはカードを開く。出てきたカードは、『3』
「ルカちゃんもカードを開いて。これはルールよ」
「………………はい、…………」
促され、ルカもカードを開く、出てきたカードは『12』
「あら、私の読み勝ちね、残念だったわね~ルカちゃん」
ポイント
リコ 3
ルカ 5
6回戦
ルカ、二枚目の『6』のカードを引くも、『2』を提出
続いて、リコも1枚提出し、ルカは降りると宣言、カードが晒される
カード
リコ 4
ルカ 2
ポイント
リコ 4
ルカ 5
7回戦
リコ、開幕直後にカードを提出
そして、ルカに番が回る
引いたカードはルカの最強カード『A』、ルカの手持ち、「5、6、6、9、A」
「(これなら、全てのカードに負けない! リコさんも、3回しか降りれないから、2回連続では降りない筈)
ルカ、迷わずAを提出。場に2枚のカードが揃う。
「リコさん、出しました。」
「…………勝負よ」
そう宣言した後、二人は、裏向きのカードをひっくり返す。
その時、勝った、とルカは思った。思ってしまった。
確かに『A』はルカにとって最強のカードである。しかし、
リコにとって、それは、2番目に強いカードなのだから
リコ ジョーカー
ルカ A
「な!? ジョーカーなんて、そんな!?」
「惜しかったわね~ルカちゃん。罰2よ」
ポイント
リコ 6
ルカ 5
8回戦
ルカ、『11』を引くも、5を提出
次いでリコも、1枚提出。
ルカ、降りる宣言で、リコに1ポイント入り、終了。
カード
リコ 5
ルカ 5
ポイント
リコ 7
ルカ 5
9回戦
「……………………」
リコ、15秒前後の思考後、提出
対するルカは
「(どうしよう!! どうしたらいいの!? どうしたら、凌げるの!?)」
引いたカードは『7』手持ちのカードは、『6,6,7,9,11』
「(11しか、出せないよぉ、11じゃ、危ないのにぃ!!)」
恐怖の鎖に縛られ、考える事が出来なくなっていた。もう、今の彼女には、『13』すら、危険なカードにしか見えないであろう。
半泣きになりながら、どうか降りてと願いながら、震える手で彼女は『11』のカードを提出する。
「出したわね……。じゃ、勝負よ」
その言葉に、その絶望のごとき宣言に、彼女は最後の手段に出る。この世界では、絶対に通用しないであろう手段を
「…………します」
「ん? 何?
「お願いですから、この勝負、降りてください……。罰を、受けたく、ありません……」
「ルカちゃん……」
「お願い、ですから……」
「ダメよ」
それは、受け入れてもらえず
「あなたがこの勝負で勝てばいいだけの話なんだから、ね?」
「無理なんです、勝てないんです、だから……だから……!!」
「良い訳なんて聞きたくないわ。 開けるわよ」
少し口調が重くなった声で言うと、彼女は自分とルカの二枚のカードを表向きにする
リコ 13
ルカ 11
ポイント
リコ 9
ルカ 5
「っ!!!!!」
「あら~残念、負けちゃったわね、罰3。ペナルティーを受けなきゃね」
「イヤです、イヤぁ」
「つべこべ言わないの。スイッチオン」
彼女が何かのスイッチを押した途端、ルカの座っている場所からベルトの様な物が飛び出し、彼女の腰と手足の動きを封じた。
「な!? 何を!?」
「だから~罰っていったでしょ、それじゃ、くすぐりくん、作動開始~」
「くすぐりくん!? それってまさか……ひゃう!?」
突然、腹周りに感じたむずがゆい刺激に奇声を上げる。
見ると、一本のマジックハンドがルカのお腹を指の腹で優しく撫でていた
「うひひひひひっ、ぐふふふふう。私いいっっひひひひひ、くすぐりはぁぁっ! 弱いのぉ~、とめ、止めてえええ~!!」
「ダメよ、これを止まるのはあなたが私から2ポイント取った後、それまではくすぐられながら私とゲームするのよ」
「そんな、そんなあああ~。あうっふふふふっ!? ひぃぃん。 きゃうん」
「ふふ、きゃうんだって。可愛い声で笑うのね~、お姉さん嫉妬しちゃいそ」
「いや、いやああ~~、早く、続きを、うふっふううううう!」
「それじゃ、始めましょうか、あなたの先攻。、手を封じたけど、ゲームが出来るぐらいには、動かせるわ」
「は、はい~~、ぐひひひ、うぐううう!」
言われて、彼女は手札を見る、さっき「10」を引いたので、手持ちは『6、6、7、9、10』だ。
「うひひひっひひいいん!(一刻も早くこれを止めないとおおおお! 考えれらないいい~~)」
ルカ、『10』を提出、リコに順番を回す。
「……………………。…………、…………。」
「あううう~~、きゃひいっ!? ふふふふっふふうううう!(お願い、早く出してえええ)」
しかし、その願い虚しく、彼女は熟考する、彼女がカードを出したのは、それあら1分経過してのことだった。
「あぐううううう! はや、はやくううううう! だして、だしてよおおおおおお!」
「お待たせ、出したわよ。で、勝負するの、しないの?」
「するうううう~~。勝負するのおおお!」
「そう、じゃああなた苦しそうだから、私が二枚捲ってあげる」
そして、リコが二人分のカードを表にする。
リコ 12
ルカ 10
「そんな、そんなああああ~~」
「あらあら、また勝っちゃった。罰追加ね」
「やめて、やめてえええ~~。……っっきゃああああっあははははははは、いやああああははははっははあっはははあっははははははははは」
今度は2本のマジックハンドが追加され、それぞれの太股をいやらしい手つきで撫で始め、腹周りのマジックハンドが本格的に指をわきわきとさせたくすぐりを行い始めた
その強すぎる刺激に、彼女は耐えられず、笑い声をあげてしまう。
「ダメええええ~~~! ダメダメダメええええええ~~、そこ、弱いのよおおおお~~~! だから、だからあああああ~~~っっはっはははははははははははは」
「ミニスカートのあなたに、その責めはきついわよね~」
楽しそうな声が、リコの口から響く。
「ヤダあああああっっやっやひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ! そこくすぐっちゃやだああああ~~~」
「くすぐられるのがイヤなら、私に勝つことね」
「無理いいいいいい~~~、無理だってばあああっっあはっあははははははははははっははっっいやああああああ~~~」
「私の先攻ね、う~ん、何をだそうかな~」
またもや長考に入るリコ、しかし、それが演技だという事は、誰が見ても明らかだった。
「いじわるうううう~~、いじわるううううううっふふふふふふひゃひゃはっははははははははははは!! ああああははははっはははははっははああ~~~」
「はい、出したわよ。でも、そんな事を言っちゃういけない子には、罰が必要かなあ~」
「あははっはっはそ、そんなあああはははっはあそんなあああああああ! ご、ごめ、ごめんなさああああああい! もういいませんからあああああ!! やめてくだ、あははははっはやめてくださいいいいいいいいい!!」
「謝ってもだ~め。はい、もう1段階強化」
「あ、あああああああああ~~!! はっあははははははははははははははははははあああああ!!」
さらに2本追加され、今度は、膝周辺を5本の指で入念にくすぐりまわし始めた。
「くすぐったいいいいいいいいいいっ!! やめてええええええへへっへえへえやだああああああ~~~」
あまりのくすぐったさに、ルカは首を左右に振り回し、長い黒髪が舞う。
お腹をくすぐっていたマジックハンドは、くすぐる早さが早くなり、太股をくすぐっていたマジックハンドは、ひらひらのミニスカートをめくり上げ、素肌を直接くすぐりだした。
「ヤダ! ヤダヤダヤダヤダヤダああああああっははははははっははははははっっあひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! そこはヤダああああああああ!! エッチいいいいいいいっひひひひひひひひひゃははははははははは!!」
純白のショーツが露になった下半身に、マジックハンドは遠慮なく襲い掛かる。こね回し、揉み解し、くすぐり倒す度に、彼女の瞳から涙が零れる。
「いやっははははっははははははははははははっっそんなとこっっそんなとこぉおっほほっほっほほほぉ! くすぐっちゃいやあああっはっはっはっははははははっはははははは!!」
身をできる限り捩り、くすぐりから逃げ出そうとするが、マジックハンドは彼女の動きに合わせ移動し、決して解放の二文字を与えない。
「くすぐったいいいい!! こちょこちょやめっっやひぇへぇへっへへへへへえへへへへへへへへへ!! やめぇえええええええええ!!」
そして、想像を絶するくすぐったさに、彼女が握っていたカードが手の中から滑り落ちる。そして、その中の1枚が偶然にも裏向きで、テーブルの上に落ちた。
「あああっ!! しまっ、うわははははははははははははあああ~~!!」
「あら、これがあなたの次に出すカードね」
「ちがっ!?、ちがあああああははははははあ、ぎゃははははははははははっはははははははっは!! ちがうのおおおおおおおお!!」
「そうは言っても、一度出したカードを戻すのは反則行為よ、もしそれをしたら、もう1段階追加だけど」
「そ、そんな、そんなああああああああああ!! ふぁあああああああああ! そ、そんな所、くすぐっちゃだめええええ~~! むり、むりっにゃはっあははあっはははははははははっっムリだってばぁ~~~!!」
「じゃあ、続行ね、私はあなたに勝負するわ、今も苦しそうだから、私がカードをめくってあげる」
そう言って、彼女はカードをひっくり返す
リコ 11
ルカ 6
「あらら、私ってば勝ちっぱなしじゃないの。また1段階強化しなきゃ」
「ま、待って! 待ってええええええええ!! これ以上はあああああ! これ以上コチョコチョされたら死ぬううううう! 死んじゃうううううう~~」
「だから言ってるでしょ、ダメだって」
「お願いよおおおおおお!! あっ! がは!! あははははははははははははははははははははは! ぎゃははははははははははははははああああああああああああああああああ!!」
さらにもう2本追加され、今度はルカの柔らかい脇腹を絶妙な力加減で揉み解した。
「やだ! グニグニ揉んじゃやだあああああああああああ~~!! お願いだから揉まないでえええええええ~~~! くすぐったすぎるううううううううう!! あ~~~あはははははははははは!!」
「脇腹をそうくすぐられるの、とってもキツイでしょ。でもね、これは、あなたが受けて当然の罰なのよ」
「腰がぁぁ~~っっいひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! くすぐったいいいいいい!! くぅあっっはっはははっははははっはははっは!! 揉まないでよぉおっっほほほほっっやあ~~っっきゃはっはっはははははははははは!! 許しっっ許してええええへひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
「ぎゃはははははははははははははははははっはっ! あはははははははははははははははははははははははははは!! もぅ、もういいでしょおおお~~~~~~!! 止めてええええええええ、これを止めてええっへひゃっはっはっははははははは!! もう充分、くすぐられたからああああああああああ~~~」
「あなた、私の話を聞いてる?」
「あっっああああ~~~~~~~~~~!! ふひゃっはははっははははははははははは!! くすぐったいいいいいいいいいいい! くすぐったいよおおおおおおおおおおおお!! 誰か、誰かっっあっははははっはっははははははははっはっだれかああああああ! 助けひぇへへへへへへへへへっへっへ! お願いですからあああああ!!」
「…………人の話を聞けないいけない子は、罰が必要ね」
そういうと、彼女はさらにもう1段階くすぐりくんのレベルを上げる。出てきたのは、2本のマジックハンド、それは、彼女の腕の付け根を狙っていた。
「あはははははは、ま、まさかああああ~~、そこだけは! そこだけはよしてええええええ!! そんなとこ、そんなとこコチョコチョされたらあああああああ! 狂う、私狂っちゃうよおおおおおおお!!」
しかし、彼女の願い虚しく、マジックハンドはゆっくりと彼女へと近づいてゆく。
「やだ、やだやだやだあああああああああああ~~ おねが、わひゃあああああああああああああ!? あっ! ああっ!! あぎゃあはははははははははははははははっははあはははははははは、やめてええええええええええええええええ!! それっっやめへぇっへっへへへっひゃひゃひゃひゃひゃっっあ~っはっはっははっはっははははははあはははははははは!!」
マジックハンドは、片方は一本指を立てて、彼女の脇の下にある窪みを指先を震えさせながら突っついたのである。
「くすぐったああああああああああああい!! くすぐったすぎてくるっちゃううううううううううううううう! ああああああああああっっいひっいひゃひゃひゃひゃははっはははははははははは!! 死んじゃううううううふっふふふふふふふっっひゃははは!!」
もう片方は、5本の指を使って、広げられたわきの下をこしょこしょと這いまわる。
「ゾクゾクしゅりゅううううううううううううう! いやああああああああああああああああああん!! あはははははははははははっはあははははは!!」
「話を聞けない子が悪いのよ」
「ごめ、ごめんなさあああああああい!! ちゃんと、あぐぐううう! ちゃんと聞きますからあああああああああ! 少しでも、あう! 良いから ひぐっ! よわめて、いひゃ!? よわめてくださいいいいいいいい!! だめへへへへへっへへへへへへへへ!!」
「だめよ、弱めてほしいんなら私に勝たないと、ほら、あなたの番よ」
そうはいっても、ルカのカードは、ついさっき落としたばかりだ。そして、彼女の手は封じられている。
「わか、わかりましたあああああははははははあああはっははああははあ!! やり、やりますからああああ~~ 取って、カードを取ってくださいいいいいいひひひひひひひひひゃははははあああああああはははっははははは!!」
「……ルカちゃん、それは私にあなたのカードを見させて反則扱いにしようって魂胆?」
「ちが!? ちがうんですうううう~~!! 取れな、カードが取れないんですううううううう~~!! 見ても、カードを見ても良いですからあああああああああ!!」
「ルカちゃん? 私は公正なディーラーなの、あなたの了承付きでも、その提案は飲み込めないわ」
「お願いですうううううううううう!! おねがわひゃああああああははははは! お願いですからああああああああ!! とってくださあああああああああああああい!!!!」
「だからダメって言ってるでしょ。そうそう、こういうのを見越してあるルールがあるんだけど、5分経ってもカードが出されない場合、出さなかった方の強制負けになるからね」
「そんな、そんなあああああああ~~~! あ~~~~ひゃはははははははははは‼ イヤあああああああはははははははっはははっはああああ~~~もうだめええええええええええええへへへへへっへへへへっへへ」
それから彼女は、ただ笑い悶えることしかできなかった。落ちたカードを拾おうにも拾えず、懇願しても取り合ってもらえず、5分と言う長い時間をひたすらくすぐられ続けた。
「へっへへへへへへへへっへへ!! あああうううううううう~~!! ぎゃはははははははははははははっは」
「脇がこしょばいいいいい! 足がこちょばいいいいいいいい!! お腹がくすぐったいいいいいいいいいいいい!!!!」
「あははははははっはははははああああああ!! 死ぬううううう~~ 死んじゃうよおおおおお 笑い死んじゃうううううううううああああああああっははははははははは!!」
「………………は~い5分経過。ルカちゃんの負け~」
場違いなくらい明るい死刑宣告が響く、しかし、それすらも、今の彼女には幸福の兆しに思えた
「負け、負けでいいからあああああ~~、これをとめてええええええええええ~~~!!」
やっとくすぐりから解放される。そこからまた返済していけばいい。そんな甘い事を彼女は考えていた。しかし、
「あら、だめよ~、あなたは負けたんだから。その負け分を体で払ってもらわないとね~。まず手始めに、5時間くらい最大レベルでくすぐられて貰いましょうか」
その言葉を聞いた途端、世界が一気に闇に包まれた気がした。
「う、うそでしょ!? だって、だって!?」
問答無用、と言わんばかりに、彼女はレベルを最大まで上げる。
「まって!! お願い! 待ってえええええ! ……っ!!!? ひぎゃはははははははははははははははははあああああぎゃははははははははははははははははは!!!!!!!!」
「それじゃ、また5時間後に会いましょう」
そう言って、リコは部屋から出て行き、部屋に残ったのは、くすぐりマシーンにくすぐられるルカ一人となった。
「あははははははははははひやああああああああああああああ!! あはははっはははははああああああああああああああああああああ!!!!!!」
「無理、ムリむりむりいいいいいいいいいいいいい!!こんなの、5時間も耐えられないいいいいいいいいいいい!!! ああ~~~ははははははははははははは!!!」
「誰かあああああああああはははははっはぎゃあはははははは!! 誰か助けてえええええええええへへへへへへへ!! このままじゃああああはははははははは、死ぬう~~!! 本当に死んじゃうううううううう」
「くすぐったああああああああああい!! くすぐったいよおおおおおおおおおおおおおお!! 狂う、くるっちゃ、うわははははははははははははああああああああ狂っちゃうううううううううう!!」
「いやああああああああああっっあっあはっははははははははははははははははははははは!! いやはははははははっははははははっはっ!! いやあああああああああ!! もう、くすぐられるのはいやああああああああああああああああははははははははははっはははっははぎゃはははははははははははははははは!!!!!」
「許して!! ゆるしてえええええええええ!! もうコチョコチョしないでえええええええっっふぁあっははははっはあはははははははははははははははは!! もうコチョコチョしないでえええええええええええ!!!」
「ダメえええええええええ、そこくすぐったいいいいいいいい!! やだああああああああああああああ!! もうやだああああああああああああああああ!! あああはははははははははあはあっははあはははははははっははははははあああああああああああああああああああ!!!!!」
「お願いいいいいいいいいいいいい~~~~!! お願いだからあああああああっあっあははははははははははははははははは!! ここから出してえええええええええええええええええ!!」
「いひひひひひひひっひひひゃあああああああはははははははははひいっっひひゃひゃひゃひゃひゃひゃっはっはははっははははははははは!!!!!」
ここは、都内にある某賭博場。
天国を求めてやってくる人間が、地獄に落ちていく場所である。
あとがき
ここまで読んでくれてありがとうございます。
今回のテーマは、心理戦です。
最後は心理戦ではない気がしますが、そこは、エロSS、くすぐりSSの運命という事で、了承してください。
最後以外の心理戦部分も、未熟さが凄く目立ちますが、自分としてはこれでも結構頑張った方だったり、つまり文の才能が無いという訳です。う~ん、文章が上手くなりたい。
このSS、自分の趣味が色濃く出ている作品でもあります。
ちょっとおどおどしている大人しい女の子、拘束された状態での無数のマジックハンドによる着衣上半身くすぐり、ヒラヒラのミニスカートから覗かせるパンツなど、自分の変態性が丸分かりの作品です。
うわ、こんなのが好きって、変態じゃん、自分。
でも、偉い人は言いました。人間は、誰しも変態さんなんだってさ。だから、こういう性癖を持っていても、良いよね?
という訳で、心理戦を描いたSSでした
次のSS更新は、大体2~4日間の間には、更新したいなと思ってます。それでは。