それは、なんてことない。ララにとってはいつもの日常のはずだった。
「見つけたぜ魔女~~! 俺の資金源になってもらおうか!」
目の前にナイフの刃先をこちらに向けながらそんなことを言う男。無論、彼女は魔法使いではあるが、魔術師という名を語っているが、魔女という肩書を受ける行為をした覚えはない。
方便だ。
ララに魔女という偽りの名称を与え、役所に連れて行く。そうすれば、魔女を連れてきた報酬で、一般人は大金を得る。
それに味を占めた一般人は、なんの保証もなく、確証も得ず、魔術師を捕らえ、魔女にしたてあげようと襲い掛かる。
それを撃退するために、彼女は一般人に力を振るう。すると今度は名誉な魔女の名前を授かってしまう。そうすれば今度は言い訳など出来ない。
だからララは逃げる選択しかできない。
そんな、反吐がでるようなサイクル。
だけど、いつものララなら、撃退用に魔術を使うのではなく、逃走用の魔術を使う事で、これらの事態を避けてきた。
そして今回もそうなるはずだった。
だが、それはかなわなかった。
あの時、ナイフを持った男が魔術師だってことがわかってれば、こうはなっていなかったかもしれない。
それがわかったときは、もう、全てが終わった後だった。
気が付けば、とある町に存在する役所の一室にララは拘束されていた。椅子に座らされ、ベルトのようなもので腰をしばられ、椅子から動けなくされ、自分の頭より一つ二つ高い背もたれから伸びる鎖に両手を万歳状態で伸ばされ、両足はピンと伸ばされた状態のまま、わずかに開脚させられる。
一言でいえば、女として最もとりたくない体制をとらされていた。
「先日発見された、少女の体から、生命力を液状化した形跡が見つかった。その呪術を施したのは貴様か? ララ・ミストレア」
「……っ! あの子に、ミイリに何かしたの!? 答えて!」
顔をフードで包んだ男から問いかけられた質問から、咄嗟に脳裏に浮かんだのは、生命力を抜き出され、生死の境をさまよった彼女の事。
まさか、彼女になにかひどい仕打ちでも……!?
「質問に答えろ、今は私が質問しているんだ」
……今は、何を聞いても無駄……か。従うしかミイリの事を探すチャンスはなさそうね。
「……私は彼女の生命力を奪ってなんかいないわ。お生憎だけどそこらの錬金術師と一緒にしないで欲しいわね」
「フ……誰でも最初はそう言うものだ。では、」
「その身体に聞くとしよう」
「………? ………………っひぁあ!?」
体に電撃がはしったかのような感触が両脇の下から迸る。見ると、そこには人の手首と思わしきものが、万歳状態で動けなくされてる脇の下に指を押し付けるように張り付いていて……。
「うっぁ………、ま、さか……やっっそれは………………ひぅ!」
その感触に彼女は覚えがあった。あの時、彼女を助けるために受けた、どうすることもできない苦しみ。それが、また来ようとしている。
イヤ! やめて! それだけは!!
そんな言葉を出そうにも、恐怖と腕の付け根からくる感触に言葉は止まってしまう。まだ触られているだけなのに、あの時のトラウマが、そこから始まる地獄が思い出され、声となって出てしまう。
「それでは、ララ・ミストレアの魔女裁判を行う」
その言葉の後、私の脇の下に張り付いていた指が、一斉に轟かされた。
「ひっっひぁあ………あ! あ!! あぁ~~~~~~~~~~~~~~っっっ!!!」
「………あ! あはは! あはっははははははは!! あははははっはははははは!! いやぁああああはははっははははは!! く、くすぐっっふはあああはっはっははははっはははは!! くすぐひゃっっひゃいいいひっひいひひひひっひひ!! いひゃああはははっははははははははははっははは!!」
張り付いた指は、彼女の脇の下にてがむしゃらに指を走らせた。それだけでも相当なくすぐったさを感じたララは、口から溢れんばかりの笑い声を絞りだす。手首から後ろが存在しない指は、しばらくそんな活動を続けて彼女の反応を伺うかのように轟き、ララを苦しめた。
「な、なんでくしゅぐっっぐひゃあはっははっははははははははっはははははは!! なんでくすぐりがっ!! じんもっっんひひひひひひひ! ひひいいあああはっはははっははっははっはははは!! なんでっなんでこれがあああはっはっははははっはははははは」
「体を痛めつけることなく、かつ的確に情報を吐く、さらに使う人間も最小限で済むとして、近年実用化された新たな尋問方法なのだが……」
「ひっあひひひひひ………やぁっっやぁあああはっはははっはははは! うわひゃはっはははははは!! あはーーーーーははっははははははは!! きゃああーーー! きゃあああーーーーーーーーーーー!!」
「……聞いてはいない、か……」
「うひゃはっはははっははっははっははははははははははは!! いやああははっはははは!! それだっそこさわっちゃっっいひゃははっはははははははは!! くすぐっちゃぁああはっははっははははははっはははっはははは!! やああ!! いや~~~~~~はっはっはははっはははっはははは!!」
やがて、どこをどうくすぐればいいかを学習し始めた指は、彼女の脇の下をつつく、撫でる、ほじるなどの、明らかにくすぐったいと思える行動を繰り返し、さらに彼女の弱点を探り始めた。
そして、それはララにとっては、いきなりに変化した強さを増した擽りに、さらに悶える事となる。
「ひっっひはああははははっはははははははは!! やっやぁあああ~~~~~~!! キクぅぅっふふふふ! あああはっはははっははははははははははは! それだっっだははっはははははははは! っっダメえええええ~~~~~!! ぎひひゃあはははっははははははは!!」
腕を何とかおろせない物かと、秒刻みに激しさを増していくくすぐりに耐えきれずに動かすも、腕はやや下がるのみで、肝心の脇の下を守る程度には動かせず、どうしようも出来ない事が彼女をやきもきさせ、また、その感情も新たな指の出現と、その動きによって生まれる感覚によって強引にかき消された。
「いやああはははっはははははっははっはははは!! くるっくるしひひひひっひひひひ!! ひああああ!! あああ!! んあぁああははっははっはははっはははははっはははは!! き、つひひひ………! きゃああああはっははははっははっはははははははははは!!?!? わ、わきばらぁああああ!? い、いやぁああはっははははっははははっははは」
脇腹をグニグニと揉む感触に、体を仰け反らせながら、一際高い悲鳴を上げた後、狂ったかのように笑い声を上げる。
脇腹を襲う指の動きは非常に巧みな物であった。最初の脇の下を考えなしにくすぐっていたのとは全く違う。まるで今の脇の下を擽る指のように、学習しているかのような動かしかたであった。
がむしゃら状態でも耐えれるものではないのに、それが最初から明らかにくすぐり方を習得しているくすぐりは、あの時のスライム以上の地獄の訪れを感じさせた。
「あはっははははっはははっはははは!! あはははははっはははは!! いやっだめええええ!! うひゃあははははっははははははははっはははっはははははははははは!!」
腰のベルトがギチギチと音を立て、手首を繋ぐ鎖がジャラジャラと苦しさを訴える。だがそれも指の動きを止める素材にはならず、それどころか、反応良しとして、さらに動きを活発にさせる起爆剤ともなっていた。
その指の動きは激しさを増していき、その結果、勢い余った指は彼女の衣服を引きちぎり、傷一つない綺麗な肌とその下着を露出させた。
「きゃあーーーーーーーーーーーーー!! やめっやめてえええええええええ!!」
突発的に訪れた肌の露出という事象に、恥ずかしさと羞恥が一気にこみ上げてきたが、その身体を隠すことはついぞ叶わなかった。
その代りなのか、肌に直接触れるようになった指が、これ幸いと動かす速度を早め、こちょこちょという擬音が聞こえてきそうなほどに彼女の体を弄ぶ。
それは、ララが感じていた羞恥という感情も全て吹き飛ばし、恥ずかしさで赤らめていた頬が、また別の意味と変わり、そこから伴うどうしよく抗えない衝動にまかせ、彼女は笑い声を辺りに響かせた。
「やだあああはっはっはははははっははははは!! もうやあああはっはっはははははは! くっくすぐったああああああい!! あはははははは! あはははははははははははははは!! 助けて! 誰かたすけっっひひゃははっははははっはははははははは!! おねがぃいいひひひっひひいひひひひひひひひひ!!」
もはや思考という能力が失われてきているのか、彼女とフードを被った男以外誰もいない部屋でそう叫ぶ。その顔は涙と汗でぐちゃぐちゃになり、その苦しさを物語っていたが、それに対する具体的な反応はなく、ただ、フードを被っている男が軽く口を三日月形に歪ませた程度であった。
「ぎゃあははっははははははっははは!! もっゆるっっいやああはっはっはっはははははっははははははは!! こちょこちょっははははははっはははははははは! こちょこちょやだあああああああ!!! んひゃははっはっはっははははははは! きゃああはっはははははははははは!!」
「ゆる? 許してほしいと言っているのか? ……なるほど、キサマはやはり生命力を抜き取ったのだな? ではければ、そんな言葉は出てこないな?」
「なっ!? ちっちがっぅあはっははっははは! ちがうひゃははっはははっははっはははははははは!! ぬきとってはっい、いなっっ!! ぁぁああ~~~~~~はっははっはっははっははははははは!! いないひっひっひひひひひ! いない、いないいいっひゃははっはははははははは!! ぬきとってないぃいいーーー!! ひゃあはっはっははははっははは!!」
「そうか、ではこの裁判をもうしばらく楽しんでもらおう。なあに、喋りたくなったらいつでも喋ってくれたまえ」
「そ、そんなっっ!!? ―――――っっははは! きゃああはっはっはっはっははははっはあははっはははは! そんなあぁあああははっははっははっははははははは!!」
魔女裁判、それは魔術師の中でも最たる悪である存在である魔女を裁き、世を平和にしようとする動きのために行われる裁判である。
「きゃっっきゃああああああ!? め、めくらなっっおっぱいさわっちゃぁあああはっはっはっははははっははっははははっははははは!! いやっっいやぁああはっははははははははははは! もうやだ! たすけてええへっへへへへへ!! きゃああははははははははははははははは!! あはは! あははははははははははははははははは!!」
ララは、無事魔女ではないと判断され、解放されるのは、まだ先の話である。